相続において最も多くの人が直面するのが、銀行口座や不動産などの名義変更、そして証券口座の扱いです。これらの財産は、故人の死亡によって「相続財産」となり、遺族の手で正式な手続きを踏んで整理しなければなりません。手続きが遅れると、銀行口座の凍結によって公共料金の引き落としができなくなったり、不動産登記が完了しないことで売却や名義変更ができなくなったりするなど、生活や資産運用に支障をきたすリスクが高まります。
以下は、主要な資産ごとの整理のポイントをまとめた表です。
資産の種類
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整理時のポイント
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必要書類
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注意点
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銀行口座
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口座凍結前に預金の確認と残高証明書取得を推奨
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戸籍謄本、遺言書(あれば)、相続人全員の同意書
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凍結後は相続手続きが完了するまで出金不可
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証券・株式
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証券会社への連絡で相続用口座の開設が必要
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証券口座番号、被相続人の死亡診断書、戸籍関係書類
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価格変動があるため早めの対応が必要
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不動産
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登記名義の変更には相続登記が必須
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登記識別情報、評価証明書、固定資産税納付書
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2024年から相続登記が義務化されている(期限あり)
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多くの方が誤解しているのは「口座が凍結されるのは死亡が公的に確認されてから」という点です。実際には、金融機関が故人の死亡を把握した時点で速やかに口座が凍結されるため、公共料金や医療費などの支払いができなくなる事例も少なくありません。事前に「預金の使い道」や「代行権限者(任意代理人)」を家族間で共有しておくと安心です。
また、不動産に関しては、相続税対策や資産分割の観点からも重要です。特に、複数人の共有名義にすると後々の売却や管理で揉めやすいため、分筆や持分調整などを専門家と相談しておくと円滑に進みます。
証券資産では、株式や投資信託などの価格が変動するため、放置することで資産価値が大きく上下するリスクがあります。証券会社によっては、名義変更に数週間以上かかるケースもあるため、早めに相続手続きを始めましょう。
さらに、財産整理の順序を決める際は以下のような流れを意識することで、無駄な手間や時間を避けることができます。
1 財産目録を作成(銀行、不動産、証券、貴重品などを一覧に)
2 優先順位を明確に(公共料金支払い、納税、家賃など生活資金の確保)
3 手続きの期限を確認(不動産登記義務、相続税申告など)
4 相続人間での協議・分配(争いを避けるための話し合いの場を設定)
5 名義変更・相続登記・金融資産の移管などを実施
このように、財産の整理は「早めの段取り」と「正しい書類管理」が鍵となります。相続人間の関係性や財産の種類・量によって手続きの難易度が大きく変わるため、複数の金融機関にまたがる資産を持つ場合や、複雑な不動産が絡む場合は、行政書士や司法書士などの専門家に相談することが望ましいとされています。特に地方と都市部では、必要な手続きや書類の取り扱いも若干異なることがあるため、地域に合った情報を調べることも重要です。